虫歯治療について
大前提は「キュア」より「ケア」
昨今のカリオロジー(虫歯学)の考えでは、削って詰めることが虫歯の治療ではありません。虫歯になってしまう背景には、細菌性の因子、糖質の取り方(質、頻度)、時間軸が大切となっており、それに様々な環境的因子が絡んでいるものと考えられています。生活習慣や環境が変わることでも口腔内の状態は大きく影響を受けます。それぞれのライフスタイルに合わせた口腔内ケアがまず大前提と考えております。
それぞれの歯に合わせた治療の提案
では既に古い詰め物、被せ物の下で虫歯になってしまっている場合はやはり治療が必要になります。1歯単位で歯を治療する場合は、「より削らない治療」=エナメル質を残す手法、を取った方が長期安定を望めます。虫歯が神経に達してしまっている場合はできるだけ神経を温存する手法をとった方が歯の破折のリスクを軽減することが出来ます。
ただし歯がより薄くなってしまっている場合は必ずしもこの限りではありません。エナメル質が残っている場合は一部歯を削ってセラミックと接着をすることで歯の補強が図れますし、歯茎が痩せてお手入れが難しくなってしまったり、既にエナメル質が失われている場合は被せ物を作ることも有効です。それぞれの状況に応じた提案が大切と考えております。
全体のバランスを見た上での長期安定
一歯単位で見れば上記で述べた通りですが、歯は1本だけで機能することはありません。奥歯と前歯のバランス、配置、向きなどによってトラブルが多発したりします。日本人の患者さんでよく見られるのが、奥歯は見えないからなくなってしまっても気にならない、前歯にトラブルが生じてから来院されるというパターンがあります。前歯にまでトラブルが生じてくる原因は、奥歯の噛み合わせのバランスが崩れてしまい、その影響が前歯に生じてくるためです。この場合前歯だけの治療をしても上手く行くはずもなく、治療を繰り返しどんどん悪くなってしまいます。当院ではたとえ1本単位の治療やメンテナンスで通われている方であっても、全体のバランスやリスクについてもお話する機会が多いです。口腔内はご自身の体重程の力が常に加わり、細菌の影響、食事で摂取する酸、糖分、熱の影響も受けるため、想像以上に過酷な環境です。人生100年時代の昨今においては、きめ細やかなケア、管理が不可欠であると考えております。