歯周病治療

歯周病について

当院の考え方

まず患者さんご自身に現状把握をしていただくことが大切です

歯周病とは歯の周囲の組織に発生する疾患全般のことで、歯肉(歯ぐき)の炎症に留まっている状態を歯肉炎、歯肉炎が進行して歯周ポケットや歯槽骨など歯周組織にまで炎症が起こった状態を歯周炎と言います。若い人にも多い歯肉炎まで含めると、日本人の5人に4人が歯周病という報告もあり、最も患者数の多い感染症、生活習慣病と言われています。

自覚がないため、気づいた時には重症に

虫歯と同じように、歯周病菌の感染がそもそもの原因で、そこに生活習慣や体質などさまざまな要因が重なって起こります。しかし、虫歯は痛くなったり見た目でもわかりやすいため多くの人が気にしますが、歯周病は初期の自覚症状がほとんどないため、気づかれない方が多いのが特徴です。歯がぐらつき始めた時には、すでに歯槽骨の3分の2ぐらいまで溶けて重症になっていることも少なくありません。

当院の特徴

まず原因やリスクを見極めることから始めます

歯周病のそもそもの原因は、歯周病細菌です。歯の表面には、目に見えない細菌からできているねばねばとした薄い膜(プラーク)が付着しています。

プラークには無数の歯周病細菌が存在し、この歯周病細菌の出す毒素が歯周病の発生や進行に大きく影響してきます。プラークが石灰化すると歯石に変化し、歯の表面に強固に付着します。歯石になると、その中や周りにさらに細菌が入り込み、毒素を出し続けます。

歯周病を悪化させるリスクとは?

糖尿病にかかると細菌感染しやすくなるため、歯周病も進行しやすくなることが明らかになっています。逆に歯周病治療によって血糖値が改善することもわかっています。糖尿病と診断された方は、歯周病にも気を付けることが必要です。

また睡眠時の歯ぎしりや食いしばりは、歯周組織に過度の負担を与え、歯周病の進行を促進させることがあります。ご両親や兄弟姉妹が早く歯を失っている場合は、歯周病にかかりやすい体質と考えられます。また10代、20代でたびたび歯ぐきが腫れるという方は、特殊な歯周病細菌に感染していると考えられるので要注意です。

タバコを吸う方は特に注意が必要

タバコを吸っていると血行が悪くなり、栄養が充分にいきわたらないため細胞の免疫力が低下し、歯周病にかかりやすく、また進行も早いのが特徴です。また喫煙期間が長くなると歯ぐきの色が自然なピンク色から黒っぽく変わり、炎症に気づくのが遅れがちになります。スモーカーの方は、虫歯がなくても定期検診やメインテナンスを受けることが大切です。そして歯やお口の健康のためにも禁煙をお勧めします。

当院の特徴

精度の高い徹底的な治療と予防でプラークコントロールを実現します

当院では、まずマイクロスコープで詳しく歯周ポケットの中を診ます。さらにレントゲンで歯槽骨の状態を確認し、歯のゆれを慎重にチェックします。かみ合わせなど全体のバランス、歯ぐきの検査等を行い、必要に応じて歯周病菌の細菌検査を行い、その後に診断を行います。

歯周病は感染症であり生活習慣病であるため、悪くなった部分だけを治せばよいというものではありません。当院では原因やリスクを見極め、生活習慣までを考えたお口の中全体の健康を視野に入れた総合的な治療と、徹底した歯磨き指導で再発予防を行います。

歯科衛生士とのチームワークで取り組む歯周病対策

歯周病治療では歯科衛生士が果たす役割も重要です。当院は担当衛生士制を導入し、担当の歯科衛生士が責任を持って患者さんのケアを担います。まず歯科衛生士が裸眼よりもよく見える拡大鏡を使用して、歯石を徹底的に除去し、その後、歯科医師がマイクロスコープを使って歯石を除去します。必要に応じて外科的な処理を施すこともあります。

治療後は、歯科衛生士が患者さんお一人ひとりの歯石のつきやすさや、ブラッシング技術、生活習慣なども考慮したきめ細かい歯磨き指導を行います。不安や疑問点は、どうぞお気軽に何度でもご相談ください。

初期の歯周病の治療

初期の歯周病治療初期の歯周病は歯や歯の周りを清潔に保つ治療を続けることで改善が期待できますので、主役は患者さん自身です。ご家庭でもしっかりとケアできるように、ていねいにわかりやすくブラッシング指導を行います。

上手に歯磨きするためのブラッシング指導

全部の歯がうまく磨かれているかを自分で確認するのは、なかなか難しいものです。ご自身の歯並びやブラッシングのくせ等を把握していただいた上で、ご自身でプラークコントロールができるように、ブラッシング方法を習得していただきます。

スケーリング(歯石除去)

歯の表面に強固に付着している歯石を、超音波ではじきとばします。歯周ポケット(歯と歯肉の間の溝)の中の歯石も慎重に取り除きます。

ルートプレーニング

歯周ポケットの深さが3~5ミリ程度の場合は、歯ぐきに麻酔をしてから歯周ポケット内の歯石や歯垢を除去します。

中程度~重症の歯周病治療

炎症が歯肉の奥まで進行し、歯周組織の破壊がひどい場合には、フラップオペレーションなど歯周外科手術を行います。さらに重症になった場合は、エムドゲインなどの歯周組織再生療法を行い、歯周組織を回復させます。

フラップオペレーション(付着療法)

歯槽骨の破壊が大きく、歯周ポケットが深い箇所はスケーリングだけでは歯石を取り除けません。歯ぐきを切開して骨から剥離させ、歯石や感染した歯ぐきを取り除きます。

歯周組織再生療法 (エムドゲイン)

タンパク質の一種を塗布することで歯周組織の再生を促す治療方法です。

こんな症状に心当たりはありませんか?【歯周病の症状】
  • 口臭が気になる
  • 歯を磨くと時々血が出る
  • 歯ぐきから膿のようなものが出る
  • 冷たい飲み物がしみる
  • 歯肉が下がってきた
  • 歯の隙間が広くなった気がする
  • 歯がグラグラする
  • 歯肉が腫れたり、痛むことがある

再生治療

歯牙移植や歯肉再生治療などにも積極的に取り組んでいます

歯周病治療や欠損補綴の領域では、再生治療が注目されています。現在、歯科医療の中でも目覚ましく研究が進んでいる領域ですので、当院では国内外の研究成果に注目し、有効な最新治療を積極的に取り入れていきたいと考えています。

歯肉移植とは?

一部の歯ぐきが何らかの原因で下がってきた場合は、歯肉移植で後退した歯ぐきの状態を元に戻すことができます。上のあごの抵抗力のある歯肉を丈夫な歯肉が不足している部位に移し、歯周組織を回復させます。

重症の根面露出への結合組織移植手術

歯周病で歯ぐきが後退し、歯根面が露出してしまうことがあります(根面露出)。見た目が悪いだけではなく、知覚過敏や虫歯になりやすく、歯そのものの安定性も悪くなり、固い物が噛めなくなることもあります。当院では根面露出の処置として、結合組織移植手術も行っています。

露出してしまった歯根は歯磨きなどによるケアが難しくなりますので、定期検診とPMTCをお勧めしています。PMTCでは、根面が露出してしまった歯も傷めることなくきれいにクリーニングし、歯の磨き方から適切な歯ブラシ選びまでていねいにご指導します。

よくあるご質問

歯周病はどんな病気ですか?

歯周病とは「歯を支える骨が溶ける病気」です。歯と歯ぐきの境目についた歯垢(プラーク)から歯の根に沿って菌が入り込み、歯を支えている周りの骨をじわじわと溶かしていき、最後には歯が抜け落ちてしまいます。

歯肉に炎症が起きた状態を歯肉炎、歯槽骨などを支えている組織全体が崩れてしまう病気を歯周炎と言います。

また、歯周病は「沈黙の病」などと呼ばれるようにほとんど自覚症状がないため、気づかない間に悪化させてしまうことがよくあります。

歯槽膿漏と歯周病は違うものですか?

同じものです。これまで、歯の周辺の歯肉が腫れ、膿が出るという症状から「歯槽膿漏」という名称が主に使用されていました。一方で最近は、歯肉だけでなく歯を支える歯槽骨をはじめ、歯の周辺の広範囲にさまざまな症状が表れるため「歯周病」という名称が多く用いられるようになりました。

歯周炎と歯肉炎は違うものですか?

歯周炎は、炎症が歯の周辺の広範囲に及んで、歯肉だけでなく歯を支える歯槽骨まで広がります。その症状には個人差があり、大半の歯槽骨を失うほどの重いケースもあります。

一方歯肉炎は、炎症が歯肉のみに及んでいる症状で、歯の周辺の歯槽骨は正常な状態にあります。

歯周病は何歳ぐらいから起こるものですか?

歯周病は成人してから起こるものと思われていますが、実は歯周炎の前段階とも言える歯肉炎は幼少期から起こりうるものなのです。

また歯周炎は、痛みなどの自覚症状がほとんどないために発見が手遅れになることもしばしばです。歯周病を予防するためには、毎日の歯磨きと歯科医院での定期検診が重要です。

歯周病はどのように予防するのでしょうか?

歯周病を予防するためには、何よりもまずプラークコントロールが不可欠です。歯の周辺に付着したプラーク(歯垢)を除去し、細菌を減らすことで歯周病の進行を食い止めることができます。

歯の上側の歯垢はご自身の毎日の歯磨きによって取り除くことができますが、歯肉の内側深く入り込んだ歯垢はご自身で除去できないため、歯科医院で清掃を行う必要があります。ご自身と歯科医院の相互の取り組みによって、歯周病を予防していきます。

歯周病はどうやって治すのでしょうか?

歯周病が進行し、溶けてしまった骨は戻すことができません。とにかく症状を悪化させないようにすることが大事です。

歯周病の原因は歯垢です。歯周病になってしまった際には、根源である歯垢=細菌をいかに減らしていくかが重要なポイントです。まずは、ご自身の毎日の歯磨きによって今以上に細菌を増加させないことが大切です。